入院した脳外科の病院は、かつて三浦綾子さんが入院されていた病院であることがわかりました。
初代院長さんと、三浦綾子さんの(退院のときの)写真が壁に飾られていました。
数ある病院の中で、このような慰めがあったことも不思議です。
入院中は、早く退院したいということが先で、結構元気に過ごしていました。
退院後は、約一カ月、仕事もお休みをもらい療養生活。
家に帰って、小田和正やさだまさしのCDを聴いていたら、声が、全然違って聴こえました。
キンキンする、金属的な音に聴こえて、脳を損傷するとこういうこともあるのかととても残念でした。
しかし、これは日が経つにつれて回復しました。今では元の音で聞こえます。
ただ、嗅覚はないままです。
嗅覚がないと、味もほとんど感じられません。不思議です。
味覚は残っているので、甘い、しょっぱい、からい、などはわかりますが、
実にあじけないものです。
でも、人と食事をするとき「おいしいね」と言ってしまう自分があります。
まあ、おいしいと感じることはできるのですが、以前の10分の1くらいの感覚です。
好きな食べ物の匂い、冬の匂い、アロマの香り、それから、危険な臭い。たとえば、ガスや、火の臭いがないということは、思った以上に不便でした。
今は仕事に復帰していますが、やはり嗅覚から判断しなければならないことも多く、
困ることもあります。
それは、周りのスタッフに助けて貰っています。
そんな風に、日常生活には戻れましたが、
ある時、医師に書いていただいた診断書に、「嗅覚脱失、回復の見込みなし」という文字がありました。
それは、事故から半年以上たった時でしたが、字を見て、深い悲しみが湧いてきました。
ああ、回復出来ないんだ、という気持ちでした。(つづく)
erino*